自然農法センターのタネの特徴の一つに、草生栽培という一般とは異なる環境の中で選抜・育成するということが挙げられます。当センター育種圃場の草生栽培は、外部からの有機物の投入を極力控え、ムギ・マメ類と野菜を輪作しながら両者を交互に作付けし、畝間に多年生牧草を生やしてその牧草を定期的に刈り取って野菜の株元に敷くといった方法で、野菜にとって厳しい環境の中で生命力・自立力のある品種を見いだします。
自然農法センターの特別研究員として「自然農法センターのタネ」シリーズの礎を築いてきた中川原敏雄さんは、定年退職後もタネの開発と普及に携わり、草生栽培を独自の理論と経験から進化させ続けています。中川原さんにご自身の草生栽培を基にした農園の技術を教えてもらいながら、自然農法による野菜づくりや健康づくりのコツを学びます。
2021.9.15
私が長年の夢だった一反百姓を始めたのは2015年からです。10aほどの農地を借りることができたので、定年退職を契機に本格的に野菜の自給に取り組んでみようと思ったのです。機械や農業資材を使わずに無理なくできるやり方を考え、鍬や鎌などの農具だけでできる、自然農法センターで取り組んできた草生栽培をベースにしました。・・・
2021.9.22
私が草生栽培を本格的に始めたのは、1990年に自然農法センターで有機栽培向き品種の育成をスタートさせた時でした。自然農法は未経験でしたが、それ以前から草生栽培に取り組んでいたので、緑肥のエンバクとクリムソンクローバーを条播きして、その間作に野菜を栽培すれば病害虫の発生が少なく無農薬で栽培できることを経験していました。・・・
2022.6.1
資材に頼らない一反百姓では、しっかりした苗を育てるのが課題です。キュウリ、カボチャなどのウリ科野菜は生育が早いので直まきできますが、トマト、ナス、ピーマンなどのナス科野菜は、育苗期間が長いので早まきしないと収穫期間が短くなってしまいます。そこで、畑で自生しているトマトがいつ発芽してくるのか観察してみると、4月下旬のまだ霜が降りる時期に発芽してくるではありませんか。・・・
2023.2.27
トマト、キュウリ、ピーマン、ナスなどの果菜類は根を張らせ、茎葉を伸ばし、側枝を発生させる栄養成長と、花芽分化から着果結実させる生殖成長を並行して進める野菜です。生育初期に強い根が張ると茎葉が充実し、栄養成長と生殖成長のバランスが保たれ、実の着きが良くなります。・・・
2023.5.11
自然育種園をスタートするとき、自給用に播く野菜品種の育成も始めました。野菜の育種をするためには、ある程度の株数が必要です。植え付け株数を多くする程、良い個体の出現確率が高まるからです。しかし、自然育種園の限られた面積で多品目の野菜を育種するためには、手間と労力を必要とします。そこでお手本にしたのが、自生野菜たちです。・・・
2024.3.15
2023年夏の猛暑は特別でした。自然育種園は松本市の山沿いにある標高700mの場所にありますが、準高冷地の涼しさは感じられず、炎天下での農作業は73歳の身体 にはかなりハードでした。実際、松本の最高気温35度以上の「猛暑日」は7月に5日、8月に10日、9月に3日の計18日もありました(平年は計5.8日)。・・・
独特の環境、思想で育成されている「自然のタネ」。国内唯一の有機栽培向け品種育成、生産、販売活動はどのように行われてきて、今後どうなっていくのか。育成者に伺いました。
2018.12.20
国内唯一の有機栽培向け品種育成、生産、販売活動はここから始まった!
自然農法センターのタネは、耕耘は最小限、低栄養状態、通路部分は全て草、という独特の環境で育成されています。このような方法の誕生背景について、育成者の中川原敏雄さんに伺いました。
2019.01.08
国内唯一の有機栽培向け品種育成はここが違う!
自然農法センターのタネは、育成思想も独特な部分が多くあります。育成者の中川原さんに伺いました。
中川原さんの関連記事はこちら↓
家庭で育てる野菜の自然栽培~発芽から種まで命のバトンをつなく~(自然農法68号より)
生命力の強いタネを育てる~植物と人間による共同育種をめざして~(自然農法72号より)
中川原さんの著書↓
『コツのコツシリーズ 自家採種入門 生命力の強いタネを育てる』(農文協・共著)