育土方法の違いによる比較を行っているC圃場で、6年間かけて育土してきた3種類の区画の土をサンプリングして、ポットに5個づつ詰め、コマツナ生育量の比較することにしました。
「堆肥、ボカシ肥、緑肥作物、土壌動物、植物根」の総合力による育土のC1区、「有機施肥・耕耘・単作」による育土のC2区、「敷草・不耕起・雑草草生」による育土のC3区です。
はじめに、土を2mm目のふるいに通して1ポットあたり1,800gずつ充填しました。その後、水を1ポットあたり850ccずつかけて土を湿らせました。このとき、C3区の土は水をかけても土の粒はつぶれず、表層に残りましたが、C2区やC1区の土は潰れてやや容量が減りました(向かって左側からC1区、C2区、C3区です)。
播種20日後、コマツナを間引きしながら葉の色を葉緑素計で計り、間引きしたコマツナ15株の重さを調査しました。
C2区ポットのコマツナの葉色は最も濃かったのですが、15株の重さは最も軽かったです。また、C2区の土は水をかけると締まりやすく、水をかけないと乾きやすい傾向で、1つのポットのコマツナは枯れかけました。
一方、C2区とほぼ正反対のコンセプトで育土をしているC3区のコマツナは、葉色はC2区よりもやや薄かったものの、15株の重さは各区の中で最も重い傾向でした。ただし、圃場で敷草を通年実施しているためか、ダンゴムシが混ざり、1つのポットは発芽後に食害されて小松菜が皆無になりました。また雑草も多い傾向です。
C2区とC3区の中間的な育土をしているC1区コマツナの葉色はC3区よりもやや薄く、15株の重さはC2区<C1区<C3区で、欠株はまったくありませんでした。
その後、6月5日に再度コマツナの生育を調査したら、なんと「不耕起+敷草+雑草草生」をつづけたC3区のコマツナ葉色が一番濃くみえました。5月29日時点では、C2区が最も濃かったのですが、今回それぞれ12株の葉色を計って平均値を出したところ、C3区は50.0、C2区が40.3、C1区36.8でした。
さらに双葉の観察では、C2区やC1区は全ての株の双葉が枯れているのに対し、C3区は全12株のうち6株の双葉はまだ緑色でした。
葉色は、主に作物が窒素成分を吸収することと関連しています。窒素は施用した有機物が分解されてすぐに作物に吸収される形態と、土に蓄積されて長期的に供給される形態(一般的に可給態窒素と呼ばれます)があります。
春先にこの可給態窒素を測定したところ、C3区がもっとも高い値でした。
畑土壌の可給態窒素の簡易迅速評価法(農林水産省)
6月に入り気温上昇とともにC3区の土に長年蓄えられた窒素が、まるで息を吐くかのように放出されてきたようです。(H.Y.)