堆肥は作付け直前の全層鋤込みは行わず、なるべく前年の秋から冬の間に鋤込みを行い、時間をかけて腐植化させておきます。
春になって堆肥を施用する場合には、播種や定植の1ヶ月以上前にくらつきで施用するか、表面に敷くようにします。
元肥はボカシ主体に10a当たりチッソ成分10~15kgを標準にしますが、全層多肥は養分過剰吸収による病害虫発生の要因になるので、養分の多い堆肥を使う場合や地力の高い圃場では減らして下さい。
特に直まき栽培の場合、ボカシは全層施用よりもくらつきに利用すると良いでしょう。
ボカシの肥料分で育てるのではなく、堆肥やボカシによって地力の発現を高め、高まった地力をキュウリ自身が引き出して使うような栽培を心がけましょう。
年々地力を高めていくには、野菜栽培のみに偏らず、穀物や豆類との間作や輪作、緑肥作物の間作や草生などによる土づくり(育土)をしていくことも重要です。
地力で育つじっくり生育したキュウリの草姿は、葉は濃緑より浅緑、大葉より小葉で葉肉が厚く、節間が短く太めで節から雌花と側枝が一緒に発生しているのが特徴になります。
早まきは平均気温15~16℃頃、目安になる生物季節は小麦の出穂、ヤマツツジ開花始め、カッコウ初鳴きです。
無理な早まきは低温ストレスによる生育停滞をおこし、アブラムシやウドンコ病の発生を招きます。
遅まきは平均気温が18℃に下がる時期からさかのぼって100日位前になります。
冷涼地で6月中~下旬、温暖地は7月中下旬~8月上旬播種して初秋から収穫を始めます。
素質を伸ばすための基礎づくりの時期です。
環境条件に最も敏感ですので、素直に生育させることが大事です。
できるだけ条件の良い時期に作付けしてください。初期生育から強い根を張らせるために直まきか若苗定植にします。
老化苗は枝の発生を抑え着果を早めて成り疲れの原因になります。また徒長苗は根の発育不良をおこし軟弱な生育になってウドンコ病、ベト病の発生を招きます。
くらつきを準備しておけば、初期生育の確保がより確実になります。
敷き草は表土保護マルチとしての効果に加えて、ミミズやヤスデなどの土壌動物を増やします。
敷き草の下の土は土壌動物の活動によって膨軟になり腐植が増えて根の活力を高めます。
敷き草は道ばたや土手の草を刈ったものや作物残さ、雑草を利用し、少しずつこまめに敷きます。
あまり早い時期から敷き草を厚くすると地温が下がり、かえって生育が悪くなります。特に冷涼地では、厚い敷き草をするのは梅雨入り後にして下さい。
少肥栽培では根のはたらきを活発にさせることが重要です。
根を広く深く張らせ広い範囲から養水分を吸収できるように、生長点を多く残す仕立にします。
そのため無整枝の自然形仕立てにしてキュウリ自身が自己調整するように自由に枝を伸ばしてやります。
株間のとり方は地力によって異なりますが、60~80cmを標準に痩せ地では狭く(50cm)、肥沃地では広く(100-120cm)にします。放任にすると主枝で50節位、側枝の長いもので30節位まで伸びますので、日陰にならないように誘引してやります。
ツルの充実を優先させるため、主枝15節以下の果実は摘み取り、本葉20枚以上になってから収穫を始めます。
収穫を初め1ヶ月頃草勢が一時的に弱ってきます。
曲がり果,尻太果などの不良果は小さいうちに摘果し、定期的に追肥、かん水して樹の回復をはかります。
米ぬか主体のボカシ肥(20~30g/m2)を10日~2週間おきに敷き草の上に施用、灌水して新根の発生を促します。
頂芽の伸びが鈍り、淡黄色になってきたら(カンザシのような形になったら)成り疲れです。親指大以上の果実をすべて摘み取ってツルの負担を軽くし、草勢の回復をはかります。
草生栽培は余分な肥料を吸い天敵を増やして病害虫抑制効果があります。畦間に緑肥(アカクローバとイタリアンライグラスの混播)を生やし芝生のようにグリーンのマットをつくります。
緑肥は直まきや定植時に畝間にばら播きし、表面をレーキで軽く起こしておくと良く発芽します。
緑肥は草丈が20~30cmまで伸びたところで定期的に草刈りし敷き草にします。
草生にするとカエルやテントウムシなどが増えてアブラムシの多発を防ぎます。
豆類や穀類との輪作、間作も有効です。冬作に小麦を作付けると、風よけや飛来害虫を防ぎ、ワラなどの有機物は敷きワラに利用できます。
上高地
上高地は環境適応性に優れています。適作型は4~6月播種の露地夏秋栽培です。側枝・孫枝の発生が良く収量に波が少ないので長期間安定して収穫できます。単為結果性(受精しなくても結果する性質)が弱いのでハウス栽培には不適です。
今井節成
上高地より茎太で草勢強いですが、雌花の肥大が早く、短側枝ですっきりした草姿になります。草勢・スタミナと作業性・収量の両立が求められる出荷用に適した品種です。関東以西の露地早まき栽培や露地抑制栽培で能力を発揮します。単為結果性が弱いのでハウス栽培には不適です。
上高地5号
上高地より小葉のやや角葉で茎が細く、すっきりした草姿が特徴です。草勢は中位、果実は22cm前後、やや濃緑です。主枝雌花着生率は35~40%で上高地より着果数が多く、側枝も連続着果する性質があり、初期から成り込みが早いです。曲がり果が少なく果揃いが良いので、多肥栽培や肥沃な土壌に好適。マルチを利用した雨よけハウスから露地の一般的栽培に適します。単為結果性があるので雨よけハウスでも栽培できますが、低温下では褐色小斑症が発生するのでハウスの早まきには不適です。
バテシラズ2号
適作型はバテシラズと同じですが、主枝雌花率25~30%で主枝からも収穫でき、普通栽培にも適します。主枝側枝型の草姿で耐暑性はバテシラズより劣るので、主枝の10節以下には雌花を過着果させないようにします。また高温乾燥期は不良果を早めに適果し草勢の回復を図ります。単為結果性が弱いのでハウス栽培には不適です。
バテシラズ
播種期は冷涼地6月上旬~7月上旬、温暖地7月上旬~8月上旬、遅まきして盛夏から晩秋にかけて霜が降りる頃まで収穫する栽培に適します。根張りがよく側枝の発生が多いので、地這い栽培もできます。自家採種しやすく自家用に最適です。
イボ美人
主枝側枝型の草姿ですが、果実の肥大が早いので下位節の雌花は摘果し8~10節から収穫します。大果で収穫するので成り疲れに注意し、敷き草をたっぷりして定期的にボカシ肥を追肥してください。
耐病霜知らず
主枝雌花率が低く、側枝の発生が旺盛で地這栽培に適します。耐暑性が強く乾燥にも耐えるので盛夏に播いて霜が降りるまで収穫する作型に適します。多肥は避け敷き草を厚くして根を十分に張らせます。昔懐かしい味ですのでぜひ自家ダネにしてください。
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