野菜の生育のしかたを見ると、人間の成長過程と似たところがあります。作物の一生は上図のように4つの時期に分けて考えることができ、野菜の種類によって利用しているステージが異なることが分かります。
幼苗期(幼年期)は生長が遅いですが、伸長期(少年期)になると急速に伸び始めます。茎葉繁茂期(青年期)が最も若々しく勢いがあり、着果肥大から成熟期(中老年期)は子育てから次世代の生活の場の準備期です。幼苗期から伸長期は、人間の子供と同様に環境の変化に最も敏感で、将来の草姿が決まり素質がつくられる大事な時期です。茎葉繁茂期(青年期)以降は、自立して自分の力で生育する時期です。
野菜に自立する仕組みがあるとすれば、私たちは、それに見合った育て方をしなければいけません。しかし今主流となっている野菜栽培には、野菜を自立させるという考え方はありません。むしろ野菜に勝手気ままに生育されたら栽培にとって都合が悪いと考え、人間が与えた肥料を直接吸わせ、収量が上がるように生育してくれるのを理想としています。肥料をたっぷり与え、除草剤で雑草との競争をなくし、病気にならないように頻繁に農薬散布をして、タネ播きから収穫まで人間の都合に合わせて管理する栽培になっています。
野菜の持って生まれた仕組みを無視した一方的な栽培、野菜の自由を許さない管理では、野菜がストレスを起こすのは当然でしょう。ストレスが日常化し、自立の仕組みが発揮できないと野菜の活動(生理代謝)が弱まり、内容(味)は薄くなり、病気を招き込むことになるのです。
野菜に対しても、人間と同じように、いつかは自立して生計を営むものという見方をしてみましょう。そうすると自ずと栽培の方向が見えてきます。人間は幼年期から少年期に育った環境が、その人の生き方に大きく影響するといわれています。農業の世界でも、昔から苗半作から八分作と言われてきたように、幼苗期から伸長期が大事です。この期間に野菜が素直に伸び伸びと生育するようならば、栽培は七割がた成功と言えます。野菜が自立した後は、野菜の思う存分の働きをさせることが栽培の基本です。