自然農法は、その地域の実情に応じた栽培体系を構築し、種苗もその地域やその環境に適応したものを活用することに主眼をおいた栽培体系です。
もともとタネは、その育成環境のなかで生活し、次の世代を残すために必要な遺伝情報を持っています。
それが自然農法・有機栽培の環境であれば、その環境で生き抜くための遺伝子が発現し、そこで育つタネを残すために必要な性質を充実させるのだと考えています。
よく、有機栽培には交配種よりも在来種や固定種が合うという話を聞くことがありますが、それは一概には言えません。
在来種や固定種であっても、化学合成農薬や化学肥料を多投入する栽培で採種が繰り返されれば、そのタネはもともともっていた耐病性や地力をうまく活用するといった能力を発揮しなくなり、退化していく可能性があるからです。
一般の在来種のなかには有機栽培で採種されているものは少なく、化学合成農薬や化学肥料を使用していることもあり、交配種となった在来種もあります。
当センターは、交配種や在来種、固定種ということよりも、どのように育成・採種された品種なのかということが最も重要と考えます。
一般品種のなかには、育種素材に活用できる品種や青果栽培として自然農法・有機栽培に適応する品種があります。
それは、そうした栽培に適応する遺伝情報を保有している可能性があるからだと考えています。
そうした性質を引き出すため、自然農法・有機栽培の環境で選抜・採種を繰り返した品種が、有機栽培や自家採種を行うのに一番よい素材と言えます。
また、市販のタネの多くは海外で採種されているものが多いなか、当センターの育成品種は全て国内採種です。
有機農業者の中には、交配種に対してアレルギーを持つ方もおられます。
交配種が懸念される理由の一つに次の年に同じ形質のものが採種できない、安全性に問題があるとの情報があるため、取扱いの明確化と国際的な規制調和が重要な課題です。
そのなかで交配種の安全性について論じる際によく言われているのが、雄性不稔や突然変異育種法、遺伝子組み換え技術、ゲノム編集技術といった育種技術です。
これらは育種年限の短縮や種子生産の効率化を図るために使われている技術です。
在来種や固定種、交配種を育成するために必ず必要な技術ではないため、当センターの育成品種には、これらの技術および育種素材として活用はしておりません。