堆肥や緑肥の全層鋤込みは前年の秋~冬のうちに済ませ、土中で腐植化を進めておきます。やむを得ず春になってから施用する場合は、定植の40日前までに完熟堆肥のくらつき施用にします。未熟堆肥を使う場合は、土壌表面を被覆するように使いましょう。前年に鋤込む場合、堆肥2~4kg/m2程度が目安です。自然農法品種は、根の強さを生かして、下記のように若苗定植するので、肥沃地では元肥は堆肥だけで十分です。養分の多いEM生ゴミ堆肥を使う場合は、株元から30cm離して施用します。冷涼地や痩せ地など初期生育の鈍い地域では、定植の3週間前にEMボカシI型100-200g/m2を表層1~2cmに混和し、地力の発現を補助します。トマトはコムギやダイズと相性がよいので、輪作や間作すると良いでしょう。緑肥草生も併用すると土壌環境の保全ができるのでお勧めです。草生に用いるイタリアンライグラス、アカクローバは前年秋(9~10月)か当年の春3-4月に播きます。
トマトの生育適温は15~25℃で、日本においては5~6月と9~10月がこの範囲に当たりますが、実際にこの期間だけトマトを栽培することは不可能です。そこで冷涼地では露地での栽培期間をなるべく長く確保するために、温暖地ではトマトが苦手とする夏の高温を避けるために育苗によって生育期間を調整します。
育苗は定植時期からの逆算で日数を考え、さらに育苗施設(育苗ハウス、庭先やベランダのプランターなどでも可)によって期間や苗の大きさを加減します。定植は平均気温16℃以上(最低気温12℃以上、地温16℃以上)が確保される時期で、温暖地で4月下旬~5月上旬、冷涼地では5月下旬~6月上旬である。育苗日数は育苗ポットの大きさで限度が決まるので、それに合わせて播種日を決める。なるべく育苗にかかる日数を確保し良質な苗を育てるには、播種箱に播種し、本葉1.5~2枚で10~14日でポットに移植する2段階育苗をお勧めします。下表のようにポットは大きいほど土量が多く、長期間育苗することができます。途中肥切れや根腐れなどを起こさなければ、一般に大きいポットほど良質で体力のある苗が得られます。
育苗ポットの大きさ | 日数の目安 | 葉数の目安 | 冷涼地例 (定植5/25) |
温暖地例 (定植5/3) |
---|---|---|---|---|
2.5寸(7.5cm) | 14-17日 | 本葉3-4枚まで | 播種4/30 ポット移植5/11 |
播種4/8 ポット移植4/19 |
3寸(9cm) | 20-24日 | 本葉4-5枚まで | 播種4/24 ポット移植5/4 |
播種4/2 ポット移植4/13 |
3.5寸(10.5cm) | 26-28日 | 本葉5-6枚まで | 播種4/18 ポット移植4/29 |
播種3/27 ポット移植4/7 |
4寸(12cm) | 35-40日 | 本葉6-8枚まで 第一花房が見える |
播種4/8 ポット移植4/20 |
播種3/17 ポット移植3/28 |
根の力を高めてバランス良く生育させるためには、若苗定植にします。育苗日数により苗のステージは様々ですが、第一花房開花までには活着しているようにしたいです。若苗を使う分栄養生長が旺盛になり、茎葉は茂り易くなるので、その分元肥を減らすと考えましょう。長年EM生ゴミ堆肥を入れてきたような肥沃な畑では、2本仕立てや3本仕立てにして草勢を分散させましょう。
裁植方法は、1本仕立で、株間45~50cm、畝間は1条植で100~120cm、2条植で180cm程度が目安ですが、仕立て方法や支柱の立て方、コムギやダイズとの間作などによって変化します。トマトは太陽の缶詰と呼ばれるくらい光を好む作物なので、あまり密植にせず1主枝当たり最低40cmの空間は確保しましょう。
トマトの根の伸長は22℃が最適温度で、15℃以下では機能が低下します。定植時に10~15cm深さの地温が16℃以上確保されていることが望ましいです。地温が低いほど栄養生長が強く茎葉が茂りやすくなり、適温22℃に近づくと花芽の発育とのバランスのとれた生育になりやすくなります。地温の上がりにくい地域では、定植予定の場所に前もってホットキャップを設置するなどして、地温を上げておくと良いでしょう。
生育初期の腋芽は根の発達にプラスに働き、着果や果実の肥大への影響は小さいので、芽掻きを急がず、少し伸ばしながら芽掻きをします。一斉芽掻きは厳禁であり、伸びて来ないようなら残しておいた方が良いでしょう。
特に硬く締まった苗や老化気味の苗を定植した場合は、芽掻きを遅らせて栄養性長を回復させると良いです。
順調に育った苗を若苗定植した場合、開花・着果・果実の肥大が順調なら8~12cmくらいの大きさで順次芽掻きします。花房直下の強い腋芽は生長が速く、特に第3花房~第5花房の着果と競合しやすく、また着果した果実に触れて果実を傷つけることが多いので、8cmくらいの大きさで基部から掻き取ります。それ以外から発生する腋芽は12cmくらいまで伸ばしながら芽掻きをしますが、開花・着果が順調に進んでいる時には、伸びの遅い腋芽を葉1枚残して摘心しておくと、後になってもう一度芽が吹き、後半の草勢維持に役立ちます。通常の栽培ならば第5花房着果以降は芽掻きをしません。
葉が黒く不定形に茂り、茎太で節間が詰まり(栄養生長過多)気味になってきたら、一時芽掻きを止め、トマト自身に伸ばす枝を決めさせ、4~5本仕立てにしてしまうと良いでしょう。
主枝が支柱の先端に届いたら、頂点を摘心せず捻枝してUターンさせ、中上段から発生した枝は放任にすると生長点が多くなり根の生長が活発になって、葉がいつまでも若く、草勢が長く維持されて病害虫の発生が抑られます。
トマトの根や花芽の健全な発育には地温の確保が重要であり、定植直後から厚く敷き草をすると地温を下げてしまうことがあります。定植直後は、堆肥マルチなど地温を下げにくい被覆とし、梅雨入りしたら、ワラや刈り取った野草や雑草を株の周りに敷き草をしていきましょう。敷き草は一度に厚くせず、少しずつ重ねていき、梅雨明け前には完全に地面が覆われているようにします。
かん水は特別に萎れない限り、第一花房の着果・肥大を見るまでは控え、以降は必要に応じてかん水します。一度にたくさんやらず、少しずつ一定の土壌湿度を保つ量を与えましょう。第4花房~第6花房の着果時期は果実肥大による負担が大きく、梅雨明けと重なる時期でもあり、土を乾かさないように注意します。
第2花房の着果・肥大を確認してから、EMボカシI型100~200g/m2(2型なら半量)程度を追肥します。敷き草の上から撒いて敷き草を足し、かん水すると良いでしょう。以降10日おきに2~3回行います。
露地栽培は疫病が問題になりやすいです。トマトの疫病は、ジャガイモやカボチャの疫病と相互に感染するので、疫病の出やすい畑では、前作や近隣に作らないようにします。緑肥草生や敷き草は土壌の粒子の跳ね上がりを防止し、水はけを良くして疫病の出にくい環境を作る効果があります。さらに敷き草の上から、定期的に木酢液200倍、食酢200倍やEM活性液100倍を散布していると、疫病菌に対する土着天敵菌の密度を上げることができます。1週間に1回、木酢液500倍やEM活性液500倍を葉面散布していると予防になります。葉面散布にはEM2や菜園EMパウダー2000倍を混用すると良いでしょう。